老人たちのゲートボール

老人たちのゲートボール

ゲートボールをする老人たちを、ぼうっと見ていた。

ひとり、腕の立つ老人がいた。4番のゼッケンを付けている。4番はしきりに〇番、〇番、と周りの老人たちをゼッケンの番号で呼び、ゲームが円滑に進行するように仕切っているようだ。

まわりの老人たちは足腰が弱っており、4番ほどシャキっとしていない。公園に響くのは、4番の声ばかりだ。

――あまり、雑談はしないのだな。楽しいのだろうか。

ルールを把握していない老人も何人かおり、そうした老人に打順が回ってくると、4番はぶっきらぼうに「〇番、〇番。〇番ゲート」などと指示を出す。

見ていると、足腰が弱く、コースを行き来するだけでも大儀そうな老人や、最初のゲートでずっと足止めされるような初心者層も混ざっている。

――こういうレベルの運動なのだから、声をかけあって、和気あいあいとやるのが本当ではないのか。自分なら、そうするなぁ……

気になって、ルールを調べてみた。スパーク打撃なるものがあり、他のプレイヤーの球に自分の球を当てたとき、連続で行動できる、というものだ。――なるほど、それでやたらと4番が球を打っていたのか。

足腰の極端に弱い老人に打順が回ってきた。背骨が曲がっていて、歩くだけでも大変そうだ。

4番がコートの対角から指示を出す。「はい打って。はい〇番、〇番、はい打ってー。早く打てってんだよ。早く打て。まったく。はい打ってー」
4番は、近くにいる老人と顔を見合わせ、底意地の悪い笑みを浮かべている。

足腰の弱い老人は苦労しながらも指示通りにスティックを振るい、球はあさっての方向に転がっていく。

――彼は、何を考えているのだろう。悔しくないのだろうか、みじめではないのだろうか。

孤独だなぁ、と思った。

ゲームは佳境に入り、4番は巧みにスパーク打撃を操り、次々に球をゴールさせていく。

「終わろうかあ。終わりー」

4番の提案で、老人たちは無言で片付けをはじめ、あっという間にいなくなった。

――健康のために、やっているんだよな。生きるために、健康でありたいと願うのだろう。私もいずれ、そう願うのだろう。そう、生きるために……

 

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